最近は演出備忘録。
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京橋の試写室で映画「童貞放浪記」の試写を終え、銀座の通りを駅に向かって歩いていたら、まっすぐな歩道の遙か向こうに見えるドンツキから自転車らしきも のがフラフラとこちらに向かって近づいてくるのが見えた。自転車は本当にフラフラしていて危なっかしいのだけれども、酔っぱらっているというふうには見え ず、ただ遠くからでもあきらかに何かブツブツと呟いていることだけは判別できた。どうにもいやな予感がしたのだけれど、自転車が近づいてくるにつれやはり その人は丸い顔であることがはっきりとしてきたので、おぬまは反射的に両足をそろえた。自転車はおぬまのすぐ脇に止まると、丸い顔のHさんが前方を向いた まま「監督、チケットは何枚売れましたか?」といつものように挨拶抜きで聞いてきた。
Hさんは「童貞放浪記」の配給宣伝をしているAという会社の社長で、一ヶ月前最初に会ったときにおぬまは「500枚売ってください」と言われて いたのだ。まだ2枚しか売れていませんとは口が裂けても言えなかったので、とりあえず「親戚に話のわかる宗教団体があるのでそこで少しつきあってもらおう と思っています」と具体的な数字はあげずに煙に巻こうと試みた。Hさんはしばらく無言でスースーと息を吐いたあと、「△△という映画の監督は二千枚売りま したよ」と言い、またフラフラと自転車を漕ぎながら去っていった。(つづく)
※概ねフィクションですよ!
Hさんは「童貞放浪記」の配給宣伝をしているAという会社の社長で、一ヶ月前最初に会ったときにおぬまは「500枚売ってください」と言われて いたのだ。まだ2枚しか売れていませんとは口が裂けても言えなかったので、とりあえず「親戚に話のわかる宗教団体があるのでそこで少しつきあってもらおう と思っています」と具体的な数字はあげずに煙に巻こうと試みた。Hさんはしばらく無言でスースーと息を吐いたあと、「△△という映画の監督は二千枚売りま したよ」と言い、またフラフラと自転車を漕ぎながら去っていった。(つづく)
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