最近は演出備忘録。
(※ネタバレあります)

映画には監督にとって最も重要だと考えるシーンが必ずあって、「童貞放浪記」ではS#61の公園のシーンであるとおぬまは極めていた。前日の雨がこの日もやや尾を引き、基本的には曇りだが弱い雨が降ったりやんだりする秋らしい煮え切らない天気となった。金井淳の実家のシーンでは洗濯物を干す母親のカットを撮る予定だったが、雨のため断念。移動後、公園のシーンを撮ることになっていたが、おぬまが最重要と考えるS#61はどうしても晴れていないと画が成立しないので、チーフ助監督と相談して公園のシーンをすべて後日に飛ばす(延期する)ことにした。結果、淳の部屋に直行し、昨夜撮りこぼした絡みのシーンも含めて撮影することになった。
淳の長電話のシーンなどを撮ったあと、畳の上に二組の布団が並べられ、神楽坂恵はパジャマ姿で現場に登場した。とりあえず二人が布団に入るまで のカットをいくつか撮り、二人の距離が縮まる過程をじっくりと撮影する。現場はロケセットなので狭く、限られたスタッフが壁際にひしめいている。萌の手が 初めて淳に触れるカットが思ったより上手く撮れたとおぬまは感じた。神楽坂にとって、長い長いリハーサルの成果が最も活かされたカットだった。山本さんの不器用に萌を気遣う様が素晴らしい。二人は近づくことができた。このあといよいよ“対戦”となる。照明の段取りなどをしているあいだ、俳優の二人には少し休んでもらうことにする。おぬまはある程度の動きはあらかじめ考えていたが、どちらかというとなるべく決めないでおこうとも思っていた。二人の動きを実際に現場で見て感じることが大事だから。特に難しいのが、どこで淳のスイッチを入れるかだ。童貞男が逡巡から実行に気持ちを切り替える瞬間。
準備ができたところで、助監督が二人を現場に戻す。おぬまは簡単な動きの説明を始めた。淳がキスをする、萌が体を起こす、淳も戸惑いながら体を起こす、萌がなんでもないというように台詞を言い、淳も残った垣根をすべて外そうと台詞を言う、萌が立ち上がって電気を消し、再び座って二人見つめ合 う。……このあと、台本上では二人が一気にキスをすることになっていたが、現場の二人の雰囲気を見ていたおぬまは、萌のほうから先にキスをすることを思いついた。女性からのキスが男性に対する受け入れのサインだとすれば、男性はその女性の態度を感じて一気にスイッチが入るであろうと考えた。淳の感情はすで に破裂寸前の風船だが、その風船にとどめの針を刺すことができる。電気が消されて暗くなりやや表情がわかりにくい状態でもあるので、二人の瞬間的な気持ち のやりとりを動きで表現できることにもなって好都合である。
萌からキスをされた淳は一気に萌を布団に押し倒すことができた。そこから先はその気持ちを継続すれば良いだけだ。(つづく)

※概ねフィクションですよ!
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