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最近は演出備忘録。
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撮影が始まる。
限られた日数の中で映画を取り上げるためには、撮影する順番をやりくりすることによって効率よくスケジュールを組む必要がある。また、ロケーショ ンの都合や俳優のスケジュールに合わせて撮り順を勘案しなければならない場合も多い。なので、俳優は物語の頭から順に演じるわけにはいかなくなるのだ。前後したシーンを編集後の繋がりを想定しながら演じ分けなければならないのでやっかいである。特に微妙な心情変化をシーン毎に表現しなければならない場合が難しく、俳優の経験の差が顕著に出る部分でもある。
この撮り順という問題で大きな役割を担うのが、撮影スケジュールの作成を担当するチーフ助監督だ。もちろん、各パートを調整しつつ効率よくスケ ジュールを組むことによって現場予算を最小限に抑えるという大きな責任があるわけだが、いっぽうでスケジュールによって映画のクオリティーが大きく左右されるという点についてはあまり認知されていない。おぬまが助監督時代直属の上司だったOさんは、現在主に阪本順治組のチーフ助監督を務めている人だが、このOさんのスケジュールは惚れ惚れするほど巧みであった。スケジュールを一日一日消化するたびに次第に映画がクライマックスに向かっていることを現場で肌 に実感することができた。スケジュールでその映画を表現していると言っても過言ではなかった。
「童貞放浪記」のスケジュールも、さまざまな制約の中にあってなお可能な限り映画を表現するスケジュールとして組まれた。初日は北島萌の出番がなく、金井淳と脇を固めるベテラン俳優のシーンで撮影は始まった。経験豊かな俳優達によってぎっしり詰まったスケジュールは着々と消化された。
二日目、大学のシーンの残りを消化したあと、その日の最後に金井淳と北島萌が駅で待ち合わせをするシーンの撮影が行われた。この映画における、神楽坂恵の最初の出番である。(つづく)

※概ねフィクションですよ!
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