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最近は演出備忘録。
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そういえば映芸に「童貞放浪記」が載っていると聞いたことを思い出し、書店の映画雑誌コーナーで発売されたばかりのそれを手にとって開いてみると、いきなり表紙の裏側いっぱいに「童貞放浪記」の広告が載っているのが目に入り、不意の出来事にしこたま狼狽えながら慌てて映芸を平積み台に戻すと、この大馬鹿野郎が監督した映画をこんな立派に宣伝してしまってよいものなのだろうかと段々怖くなってきて、咄嗟にカバンから檸檬を一つ取り出して映芸の上に置き、踵を返して立ち読みする人達を掻き分けながら逃げるように本屋を飛び出すことになろうとは、当然のことながら一年前のおぬまに想像できるはずもなかった。
撮影まで一ヶ月を切ったころ、神楽坂恵のリハーサルはようやく全てのシーンを一通りやり終えた。映画と同じように、北島萌の登場シーンにも(宿 命的に)始まりと途中と終わりがある。始まりは出会いであり、重要なのは金井淳が北島萌に惚れること、つまり北島萌を演じる神楽坂恵が惚れるに値する対象になることだが、それは演出的な技術よりも神楽坂本人の魅力にかかっている、というのは女優に対して失礼かもしれないが、もちろんそれは綺麗でいてくれとか良い性格でいてくれとかスタイルを良くしてくれとかそういうことではなくて、神楽坂が一生懸命演じれば自ずと人を惹きつけるようになるはずだということで、その点、おぬまはあまり心配はしていなかった。この世に魅力を持っていない人間など一人もいないから。そこでの自分の仕事は、そうしている神楽坂の賢明な姿をしっかり見てあげることで、北島萌の始まりはそれにつきる。
途中、は相手役との延いては世界との交流が主になる。これは何度もリハーサルを反復して、今ここに生きているのは自分だけではないことを全身で感じながら演じられるようにするしかない。反復反復。最近は神楽坂も「上手くできたときとそうでないときの違いがなんとなくわかるようになった」と言っていて、少しずつ体感できているらしい。『わかるって素晴らしいことだね』これはあざらしの言葉。
さて、終わり、である。これは監督も俳優も北島萌も神楽坂恵も、それぞれの“態度”で決まる、とおぬまは考える。始まりと途中をどのように受け止めてどのように解釈しどのような態度でこの地平に立つか。その態度が出現するとき、あらゆる事象は終わる。北島萌がそのような態度を見せなければならないシーンは、この映画の最も重要なシーンでもある。この2ヶ月半のリハーサルはまさにそのシーンのためにあると言っても過言ではない。この映画が終われるために、大馬鹿野郎のおぬまと神楽坂はもう一度はじめのシーンからリハーサルを反復する。
もうあまり時間はない。すでにスタッフも準備を始めていて、主演以外のキャスティングも徐々に決まりつつある。そして明日はいよいよ山本浩司と神楽坂恵が初めて対面する日である。(つづく)

※概ねフィクションですよ!
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