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最近は演出備忘録。
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撮影初日に神楽坂恵の出番はなかったのだが、マネージャー・Mさんの提案もあって現場に来て撮影の様子を見てもらうことになった。もちろん現場に慣れてもらうのが目的だが、2ヶ月半の助走を含めて長い準備過程の一つとして自然なかたちで現場に“いる”ことができればいいのだがと願いながら、おぬまは彼女に 気の利いた言葉を投げかけてやる余裕もなく撮影に没頭していたと記憶する。 http://ameblo.jp/kagurazaka-megumi/day-20080925.html
二日目は居酒屋のやたら登場人物が多いシーンでてんやわんやだった。このシーンにも神楽坂は登場せず、彼女は夕方のワンシーンのみの出番に備えて待機していた。居酒屋のシーンは、個性豊かな俳優陣に囲まれる主演・山本浩司という配置が絶妙のキャスティングバランスであることをあらためて確認することができて監督としては無闇に楽しかったのだが、昼食後大変なことが起こった。山本さんが食あたりしたらしく、猛烈な腹痛に襲われたのだ。ロケ弁に当たったのではないかと推測されたが、彼以外の誰にもそのような症状が見られなかったため原因は不明であった。スタッフは山本さんに病院に行くことを勧めたが、 彼は真っ青な顔をしながら「大丈夫ですから」と撮影続行を訴えた。そんなわけで、午後の金井淳は最悪の体調と戦いながら演じられたものであった。天才・山本浩司が体調の善し悪しで演技が変わることなどないことは言うまでもないが、ロケバスで待機する山本さんのアブラ汗が今でも忘れられない。耐える俳優の 顔って格好いい……と、思いながら見ていると、おぬまの視線を感じたのか山本さんがふいに振り返って「病院は行かなくて大丈夫ですけど、マジでヤバいです」と言った。
居酒屋のシーンを撮り終えて都内私鉄駅前に移動し、金井淳が北島萌と待ち合わせをするシーンの撮影に取りかかる。腹痛と闘う山本浩司が北島萌の声に反応して振り返ると、そこには2ヶ月半のリハーサルを経てついに撮影本番を迎えた神楽坂恵が、夕方のやや色温度を下げた空を背景にしながら柔らかい笑顔で立っていた。(つづく)

※概ねフィクションですよ!
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