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最近は演出備忘録。
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「“センス”は大変魅力的だけど中身は空っぽだからね」
本を読んでいたあざらしが突然お告げのように呟いた。ありがたく拝聴したおぬまは家を出て駅に向かいながら心の中で呟く。
「映画はドラマだ。センスではない」
「童貞放浪記」の脚本は半分以上が金井淳と北島萌のシーンで成り立っており、しかも北島萌が金井淳以外の人物と絡む芝居はほとんどない。残り約 一ヶ月半、神楽坂は金井淳と出会い、あんなことをしてこんなことをしてそんなことになる幾多のシーンを一つ一つ反復し、それを自分のモノにしなければなら ない。難しい作業ではあるが、その過程を見ることができるのはおぬまにとってありがたいことだった。北島萌と神楽坂恵のどこが違ってどこが似ているかをじっくり見極め、必要とあれば登場人物の性格や振る舞いを俳優自身に近づけることもできる。
まず出会いのシーンを簡単な動きのみの指示だけでやってもらう。大切なのは彼女がどのような演技プランを抱えて現場に臨んできたかを知ること。なので、あまり余計なことは言わず、すぐにやってもらった。
すでに一ヶ月ほどリハーサルを重ねてきた神楽坂は緊張したり、迷ったりすることはなく、しっかり自分なりのプランを持って最後まで演じた。そのこ とをまず確認できたことは良しとする。だが、演技そのものは「偏差値の高い女性」をあまりにも意識しすぎていた。役を演じようとする意欲はリスペクトすべきだが、自分を取り繕うように見えてしまっては何もかもご破算となってしまう。まず「こういう役を演じる」という意識を全部捨ててもらう。「私がそこにい る」ということだけに集中して欲しいと話した。もう一度、さっきと同じ簡単な動きだけでやってください。そう。東大卒とか、頭が良いとか、そういうことは 全部忘れて。一回、自分でやってみて。神楽坂恵で。
「映画はドラマだ」
撮影まで約一ヶ月半。北島萌と金井淳の間にドラマは現れるだろうか。
おぬまも神楽坂もセンスで勝負すべきでないことだけは確かだった。
(つづく)

※概ねフィクションですよ!
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