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最近は演出備忘録。
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簡単な動きを加えて台詞を読んでもらったが、神楽坂恵はあきらかに戸惑いを見せた。手順を覚え、タイミングを確認し、尚かつ台詞を思い出しながらの作業な ので無理もないのだが、それにしてもあれほど滑らかに出ていた台詞が途端にぎこちなくなったのは、第一に彼女の性質が原因と見たほうがよい。神楽坂は同時 に複数のことを実行するのが苦手である……とおぬまは心の中でメモをしたあと、「休憩しましょう」と宣言してペットボトル入りウーロン茶を無闇矢鱈と飲ん だ。
それにしても、である。何かをしながら台詞を言う、という作業は演技の基本でもある。というか、そんなことはあらゆる人が日常、頻繁かつ自然に 行っていることなのだ。例えば、テレビのチャンネルを変えながら「え? CDって燃えないゴミなの?」と言ったり、煎餅の袋が手で開けられないのでハサミ を探しながら「ブラックホールって『時空の他の領域と将来的に因果関係を持ち得ない領域』のことなんだって」と言ったりすることは、普段の生活の中でよく あることである。なので神楽坂にはなんとしても“ながら芝居”を身につけてもらいたいと、おぬまは心をギュッと縮めた。
神楽坂は動きながらの台詞読みが上手くできなかったためか、「いや」とか「は」とか「うーも、そ、えや、あぐ」などと訳のわからないことを口走っていてややパニックに陥っていた。そんな彼女の様子を見て、おぬまは動きを単純化させることにした。
「じゃあ、次は寝転んだまま台詞を言ってください」
は? という顔をする神楽坂に、おぬまは神父のごとき穏やかな顔で繰り返す。
「寝転んだまま台詞を言ってください。寝転んだまま動かなくてもいいですし、時々寝返りを打ってもかまいません。自由にダラダラいい加減にリラックスして力を抜いたまま、台詞を言ってください」(つづく)

※概ねフィクションですよ!
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